『流浪の月』凪良ゆう あらすじと感想(ネタバレなし)

小説

2020年 本屋大賞を受賞した
凪良ゆうさんの『流浪の月』を
ご紹介したいと思います。


○ 自由に生きたいと思っている人
○ 自分の気持ちを人に話せない人
○ 考えさせられる作品が好きな人


に、おすすめの1冊です。
 

基本情報とあらすじ

タイトル:流浪の月
著者:凪良 ゆう
発行日:2019.8.30
発行所:東京創元社
文庫化:2022.2.26


周りの人に「浮世離れしている」と言われていた母と、
優しい父に、自由に育てられた更紗。


9歳のとき、父が病死し、
その後母は、新しい恋人と共に姿を消した。


伯母の家に引き取られるが、そこに居場所はなく、
家に帰りたくない更紗は、公園で1人本を読む。


ある日、雨の中、
傘をささずに本を読み続ける更紗に、
いつも公園にいた、19歳の文が、
「うちにくる?」と聞き、更紗は文の家に行った。


それから2ヶ月、文と更紗は
自由に、穏やかに、楽しい日々を過ごした。


更紗にとっては、
文が自分を救ってくれたわけだけど、
世間は2人を、「女児誘拐事件」の
”被害者”と”加害者”として扱った。


その2人が、15年の時を経て、再会する。
再び交わった2人の人生が、最後どこに向かうのか。

2人の関係と気持ち

娘とクッキー作りをしていて、
生地を冷蔵庫で寝かせている間に手に取った本書。


途中で読むのをやめることができず、
一気読みしてしまいました。


読み終わった最初の感想は、
「こりゃ本屋大賞とるわな!」でした。


凪良ゆうさんの本は、初めて読んだのですが、
とても読みやすく、違和感なく読むことができました。


文に対する気持ちや、自分たちの関係を、
何と呼ぶか分からない、と
更紗は何度も言っていたけど、
わたしは「愛」じゃないかなぁと思いました。


「愛」って、別に、好き嫌いの好きとか、
恋人や夫婦の間にだけあるものじゃないですよね。


相手を大切に想う気持ちや、
そばにいたいと想う気持ち、
相手の幸せを願う気持ちは「愛」だと思います。



たしかに、今まであるものとは違い、
新しい関係なのかもしれないけど。


警察に対してや、周りの人に対して、
本当の気持ちや、本当のことを
上手に言えない更紗にもどかしさを感じたけど、
上手に言ったところで、
やっぱり分からない人には分からないだろうなと思いました。


それは、事実がどうこうっていう、
外側の事象ではなく、
人は自分自身のフィルターを通して
物事を見るからです。



だから、何かを誰かと共有したり、
共感しあうというのは、
本当はものすごく難しいことで、
100%分かり合うことはできません。


だけど、事件が大きくなってしまったから、
自分たちのことを知っている人が多くて、
いつも ”被害者”として扱われるのは、
きつかっただろうなと思います。


まして、本当に被害を受けたわけではなく、
救ってくれたと思っているとなれば、
その想いは心の中でずっとくすぶり続けるはずです。

アイスクリームは自由の象徴

本書の表紙は、アイスクリームです。


本書にとってアイスクリームは
「自由の象徴」です。



物語の中では、
夜ごはんのかわりにアイスクリームを食べたり、
夜ごはんを作っている途中でアイスクリームを食べたりします。


通常「よくない」とされていることを、
更紗は自由に楽しそうにやってのけます。


その「自由さ」が、
文を救ったのだろうなと思います。


良い・悪いでジャッジされない自由さが、
文の心を軽くしたのだろうなと思います。



更紗と文が一緒に過ごした2ヶ月間の、
更紗の自由奔放な言動は、とても魅力的です。


でもそれ以上に魅力的に感じたのは、
更紗の母の育て方です。


ちょっと、引用しますね。

ママ友とのおつきあいより、楽しいことがたくさんあるそうだ。映画を観ること、音楽を聴くこと、朝でも昼でも飲みたいときにお酒を飲むこと。お父さんとわたしとの暮らしを愛することに忙しく、つまんないことに割く時間なんてないと言う。

『流浪の月』凪良 ゆう著 東京創元社

素敵だと思いませんか?
わたしはこんな母になりたいと思いました。


わたしが子どもだったら、
自分も自由でいたいし、
母にも自由でいてほしいと思います。


今、娘がいる身として、
娘にも自由でいてほしいなと思うわけです。


あんなに自由奔放だった更紗ですが、
事件後、自分の思う通りに、
自由に振る舞うことができなくなっていきます。


ですが、文と再会すると、
徐々にその自由さを取り戻していきます。


元々更紗が自由な気質があるのはそうなのですが、
文の前だと、その本来の自分の姿でいることが
できるのだろうなと思いました。


自由さを取り戻し始めた更紗が、
「やりたいことをやってるときって、すごく気分がいいのね」
と言うシーンがあります。


そう。やりたいことをやってるときって、
とても気分がいいんですよね。


わたしは、自分もそうだし、娘にも、
やりたいことをやる、
自由な人生を歩んでほしいなと思います。

自分自身で確かめてほしい

わたしは小説を読んだあと、
読書ノートに感想をまとめ、
Amazonのレビューを読みます。


同じ本を読んだ人が、
どんな感想を持ったのかが気になるからです。


最近、自分では★5の小説でも、
Amazonのレビューが低く、驚くことがあります。


本書もそうでした。


「こりゃ本屋大賞とるわな!」と思った本書も、
レビューでは、☆1や☆2のレビューが目立ちました。


更紗にイラついている人や、
全く共感できない、という人が多かったです。


こういう人たちは、一般的に「間違っている」と
言われるようなことをしたことがないのでしょうか。


誰にも理解されずに、
苦しんだことがないのでしょうか。


もしかしたら、本書は、読む人によって
全然違う感想を抱く本なのかもしれません。


物事もそうですが、小説を読むときも、
人はそれぞれのフィルターを通して読んでいますからね。


ですが、わたしは★5の評価をつけるくらい、
本書が気に入りました。


読んでいる最中も、
涙ぐむことがありましたが、
映画の予告編を見たら、
また涙ぐんでしまいました。


わたしは、更紗と、文に、
いつまでも幸せでいてほしいなと思います。


ぜひ、読んでみてください(´ω`*)


ブログランキングに参加しています。
▼▼▼
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村


読書日記ランキング


コメント

タイトルとURLをコピーしました