『死神の浮力』伊坂幸太郎 著 あらすじと感想(ネタバレなし)

小説

死神・千葉のシュールな笑いがクセになる物語、伊坂幸太郎さんの『死神の浮力』をご紹介したいと思います。


○シュールな笑いが好きな人
○ミステリーが好きな人
○死について考えたい人


に、おすすめの一冊です。
 

基本情報



タイトル:死神の浮力
著者:伊坂幸太郎
発行日:2013.7.30
文庫化:2016.7.8
発行所:文藝春秋

あらすじ

娘を残虐に殺された小説家の山野辺は苦しみの中にいた。著名人であるが故に、連日マスコミが家に押しかけてきていた。心無い取材に晒され、心がすり減っていた。


さらに追い打ちをかけたのは、犯人とされていた男・本城が第一審で無罪になったことだ。


しかし、山野辺は彼が犯人であることを「知っていた」。 彼はサイコパスと呼ばれる反社会的人格者で、 自分が犯人である証拠を、山野辺宛てに送ってきていたのだ。


控訴の猶予期間は二週間。山野辺と、妻の美樹は、一時的に自由の身になった本城を探し、自分たちの手で裁きを加えようとしていた。


そこに千葉という男が現れ「本城の居場所を知っている」と言う。 山野辺夫妻は半信半疑ながらも、この妙な男と行動を共にすることにする。


千葉という男は、死神である。


死神の特徴は、①CDショップに入りびたる。②苗字が町や市の名前である。③受け答えが微妙にずれている。④素手で他人に触ろうとしない。


死神は、上から指示された人間を1週間かけて調査する。そののち、その人間が死んでもいいと思えば〈可〉、死ななくてもいいと思えば〈見送り〉という判断をする。〈可〉の判断をすると、翌8日目には死が実行される。


1週間の調査と判断が、死神である千葉の仕事だ。


突如現れた千葉と、山野辺夫妻は、サイコパス本城に復讐することができるのか。

感想

本書は、『死神の精度』に続く、死神・千葉シリーズの第2弾です。前作は短編でしたが、今回は長編です。


このシリーズの最大の魅力は、なんといっても、死神・千葉のキャラクターです。もうね、とにかくファンになっちゃうんですよ。


千葉は、とにかく音楽が大好き。CDショップに入り浸って音楽を聴くのはもちろん、CDプレーヤーでもカーステレオでも、とにかく音楽を聴くことが最優先事項です。


そして、面白いくらい話が噛み合わない。笑 千葉は決して笑わせようと思って言ってるわけじゃないから、それがシュールな笑いを誘います。


この作品は、「死」を題材にしています。死と向き合い、死について考えるシーンがたくさんあります。


千葉は、いつも物事を客観的に見ています。山野辺の復讐が、成功しようが失敗しようが、千葉はどっちでもよくて、まったく興味がないんです。物事をあるがままに見るさまは、「神」の視点だなと思いました。


だから千葉は、非常に冷静に観察できるわけです。

人は、自分でコントロールできるものは安心だと考える傾向がある。

『死神の浮力』伊坂幸太郎 著 文藝春秋

人間がやれるのは、自分をコントロールすることではなく、コントロールできない言い訳を考えることと、目標を変更することだ。

『死神の浮力』伊坂幸太郎 著 文藝春秋

死神だからこそ、人間の習性がよく見えるんですね。


この作品には、香川という千葉の同僚が登場します。女性の姿をした死神です。2人はCDショップでよく会います。


香川という死神がいる、ということは、誰かを調査しているわけで、そのことも絡み合って面白い展開になっていきます。


香川のセリフで、面白いなぁと思ったものをご紹介します。

氷は姿を消すけれど、全体の量は変わらない。人間の死と似ているでしょ。

『死神の浮力』伊坂幸太郎 著 文藝春秋

これを聞いて、「魂」という言葉が浮かびました。なんだかスピリチュアルな雰囲気もしますね。


この作品は、登場人物たちが、それぞれ考えた「死」について意見をバンバン言います。こうじゃないか、あぁじゃないか、こういう見方もあるよな、と。


作品の最後に、伊坂さんが「死についていろいろ書きましたが、僕は死についてはまだ分からないし、フィクションだと思って楽しんでほしい」と注意書きを書くくらいです。


そもそも死神が出てくる話ですから、当然「死」に関連はあるのですが、全く暗くならないところが、伊坂さんのすごいところ。読後感もすがすがしく、気持ちのいい終わり方です。


ぜひ、読んでみてください(´ω`*)
 

 
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