『死にがいを求めて生きているの』朝井リョウ 著 あらすじと感想(ネタバレなし)

小説

人生について深く考えさせられる作品、朝井リョウさんの『死にがいを求めて生きているの』をご紹介したいと思います。


○生きる意味について考えたい人
○生きがいを求めている人
○生きがいがある人


に、おすすめの一冊です。
 

基本情報



タイトル:死にがいを求めて生きているの
著者:朝井リョウ
発行日:2019.3.10
発行所:中央公論新社

あらすじ

植物状態のまま病院で眠っている南水智也(みなみ ともや)を、何度も病院に足を運び、献身的に見守っているのは、友人の堀北雄介(ほりきた ゆうすけ)だ。


雄介は、「こいつの人生が止まった瞬間に何もできなかったから、せめて、こいつの人生がもう一度始まる瞬間には、絶対に立ち会いたいって、そう思ったんです」と語る。


智也と雄介は、見た目も性格も大きく違う。それなのに2人は小さい頃からいつも一緒にいて仲がいい。周りの人たちはいつも思う。「なんでこの2人は仲がいいのだろうか?」と。


2人はどんな関係だったのか? 2人の間に横たわる”歪な真実”を、2人の周りの人たちが語っていく。


智也の担当看護師である白井友里子。2人が通っていた小学校に転校生としてやってきた前田一洋。2人が通っていた中学の同級生である坂本亜矢奈。同じ大学に通う安藤与志樹。ドキュメンタリーを撮っているディレクターの弓削晃久。


最後には、2人が見ていたもの、2人が抱えていたものが明らかになる。

感想

普通に生活していたら見逃してしまいそうな、小さな違和感もきちんと言語化してくれる作品だなぁと思いました。それが癒される反面、見たくないと思っていたことも容赦なく言語化してくるので、とても苦しい部分もありました。終始自分の深いところにズシンズシンと響いてきました。


夢中になれる何か、生きがいをずーっと探し続けている雄介。そんな雄介が自分と重なりました。雄介は終盤、人間は3種類に分けられると言います。

「一つ目は、生きがいがあって、それが、家族や仕事、つまり自分以外の他者や社会に向いてる人。他者貢献、これが一番生きやすい。家族や大切な人がいて、仕事が好きで、生きていても誰からも何も言われない、責められない」

『死にがいを求めて生きているの』朝井リョウ著 中央公論新社

とてもよく分かります。アドラーは、幸せを「貢献感」と言いました。人は、誰かのため、何かのために何かをしたいと、心の奥では思っているのでしょうね。

「二つ目は、生きがいはあるけど、それが他者や社会には向いていない人。仕事が好きじゃなくても、家族や大切な人がいなくても、それでも趣味がある、好きなことがある、やりたいことがある、自己実現人間。このパターンだと、こんなふうに生きていていいのかなって思うときが、たまにある。だけど、自分のためにやってたことが、結果的に他者や社会をよくすることに繋がるケースもある」

『死にがいを求めて生きているの』朝井リョウ著 中央公論新社

誰かのためにはならないかもしれないけど、自分が楽しいからやっている、という人たちのことですね。基本的には楽しいからいいんだけど、雄介が言うように、ときどき「こんなふうに生きていていいのかな」っていう不安や疑問が浮かびます。

「三つめは、生きがいがない人。他者貢献でも、自己実現でもなく、自分自身のための生命維持装置としてのみ、存在する人」

『死にがいを求めて生きているの』朝井リョウ著 中央公論新社

ただ生きてるだけ、ということでしょう。わたしはそれが悪いとは思いません。ですが、人は意味が感じられないことが嫌いです。「生きる意味」を見出すことができないと、生きること自体つらくなってしまいます。


さらに雄介はこのように続けます。

「つらくても愚痴ばっかりでも皆とりあえず働くのは、金や生活のためというよりも、三つ目の人間に堕ちたくないからなんだろうなって。自分のためだけに食べて、うんこして、寝て、自分が自分のためだけに存在し続けるほうが嫌な仕事するより気が狂いそうになること、どこかで気づいてんだろうなって」

『死にがいを求めて生きているの』朝井リョウ著 中央公論新社

わたしたちは、誰かに、何かに、「生きていていいよ」って言って欲しいものなのかもしれません。自分で自分の価値を認めるのが大切だと言われていても、それでも他人に認めてもらいたいと思うのは、自分が生きる意味を見出したいからなのかもしれません。


自分の人生について、自分が生きる意味について、深く考えさせられた作品でした。473ページあり、けっこう厚い本ですが、最後まで読む価値はあると思います。ぜひ、読んでみてください(´ω`*)

 
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